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2025/07/14 20:36
誰にも触れられず、
誰かの記憶だけが滲む場所がある。
REMAKEBYKのアトリエは、
機能ではなく“緊張”でできている。
木の軋み、糸のうなり、
衣服の裾がわずかに風を孕む瞬間。
それらはすべて、静かな秩序の中に封じ込められている。
ここは、作業場ではない。
展示室でもない。
ただ、「服の構造がひとつずつ崩れ、組み替えられる“儀式の場”」である。
畳も、道具も、紙片も──
見慣れた素材たちが、まるで記号のように整列し、
何かを語る直前で止まっている。
ここにあるのは、日常でも非日常でもない。
「現実を切り離すための、静かな異物」だ。
意味を押しつけないということは、
沈黙を贅沢として扱うということでもある。
アトリエという空間自体が、
その前夜を凝縮した聖域なのだと思う。
誰にも説明されず、
誰かに見られることを前提としていない、
けれど確かに“始まり”が宿っている場所。
服づくりという形式を借りて、
人と、社会と、自分との距離を測るために。
この場所は、今日も静かに呼吸をしている。