blog

2026/10/10 09:12


服はいつか、着られなくなる。


色が褪せ、形が変わり、誰かの生活から離れていく。

大切にされていたものも、役割を終える日がある。


しかし、未来に残らないことと、過去に存在しなかったことは違う。


生地に残る皺や擦れ、かつての縫い目。

それらは、誰かの身体とともに過ごした時間の痕跡でもある。


古い服を解体していると、そうした痕跡が新しい構造を考える手がかりになることがある。

布の分量や配置を変えることで、以前とは異なる輪郭が生まれる。


つくる過程でも、思い描いた形にならないことがある。

採用しなかった構造や、使わずに終わる素材もある。


すべての過程を肯定する必要はない。

ただ、望んだ結果に至らなかったからといって、費やした時間まで無意味になるわけではない。


何を残し、何を変えるか。


過去を美化するためでも、すべてを残すためでもない。

いまある素材と向き合い、一着の服として成立させる。


いつか、この服も役割を終える。


それでも、着られていた時間が存在したという事実は変わらない。